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悲しい「残念な治療」2

残念な治療の原因として、我々が目にすることが多い治療法のひとつが拡大床というものを使ったやりかたです。私も拡大床を全て否定するわけではありません。治療のタイミングと症例を選べば上手くいくこともあると思います。逆にいうと、元々無理という症例もあるし、できる症例でも治療のタイミングがとても重要というわけです。

2013年の日本臨床矯正歯科医会の大会で拡大床の治療で本来は顎の骨にしっかりうまっているはずの歯根が、顎の骨からはみ出してしまった症例が示されました。CTでもその様子がしっかりと確認でき、歯茎から根がみえるばかりでなく、歯の神経も死んでしまっていました。歯のデコボコを治すために、このようなことをやってもよいのでしょうか。

この症例ついては、抜歯をして治療をするというのが適切な方法だったに違いありません。患者さんは現在歯学部で勉強されているとのことでしたが、歯科医師からは抜歯をするという選択肢は示されなかったとのことです。100歩譲って、歯根が顎の骨からはみ出てしまうというリスクを患者さんが自分で選んでも抜歯をしたくないということでしたら良かったかもしれません。でもこのケースはそうではありません。もちろん、正しい方法は歯科医師が正しい治療の仕方として、抜歯をすすめ、抜歯をそれでもしないということであれば矯正治療によって得るものと失うものでは失うもののほうが大きいということを説明し、治療を始めないもしくは、抜歯して治療を始めるということです。

この拡大床を使う治療の問題には、多くの患者さんが矯正治療で抜歯を嫌がるということも背景にあることは否定できません。拡大床は抜歯しないありきの治療なのです。

抜歯非抜歯のメリット・デメリットはまたあとでまとめますが、矯正専門医は患者さんが抜歯を喜ばないのを知っています。でもそれをすすめる場合、抜歯が患者さんにとって大きなメリットとなることを確信しているのだということをわかっていただければと思います。ちなみに日本臨床矯正歯科医会の会員調査によると、矯正専門医で構成されるこの会の抜歯治療率は約60%ということです。

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