第3話:はじめての方に知ってほしい「矯正治療の3つの目的」
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第3話:はじめての方に知ってほしい「矯正治療の3つの目的」
私は相談に来た患者さんに「矯正治療には3つ目的があります」とお話しています。
それは
歯並びの改善
噛み合わせの改善
横顔の改善
の3つです。
大方の人は歯並びの改善を目的に治療にいらっしゃいます。でも多くのこころある矯正医は歯並びの改善だけを行なうのではなく、噛み合わせの治療も行います。すなわち歯並びだけを綺麗に並べて噛み合わせはむちゃくちゃというような治療はしないということです。
このような治療は残念な矯正治療では多く見られる治療です。噛み合わせを主訴に来院される方もいらっしゃいますし、3番目の横顔を綺麗にしたいということでいらっしゃる患者さんは最近当院では増えて来たように感じます。
私の診療室ではホームページにも横顔が綺麗になるよということを説明している影響もあるのかと思いますが、コンサルティングをしていると「矯正でこんなことできるとは思わなかった」という患者さんも多くいらっしゃいます。
以下順番に各項目の説明をしていきたいと思います。
歯並びの改善
デコボコの歯並びや見た目がきになるということで来院される方はとても多いです。前歯のデコボコが治っただけで笑顔の印象は大きくかわります。
当院では治療後の患者さんに治療を終えたところの感想を書いていただくのですが、歯並びを治す前は気になって人前で笑うことが出来なかったという方が想像以上に多くいらっしゃいます。
しかし大人で来院されるかたでは、歯磨きがしにくいからという理由の方もいらっしゃいます。デコボコの歯並びでは歯磨きはたしかに効率的ではなく、綺麗に清掃するのは難しいと思います。
歯並びを治さないと歯周病予防ができないとか、虫歯予防ができないということではありません。しっかり歯磨きをして定期的なメンテナンスに通うということが基本です。しかしデコボコが重度の場合、矯正治療は、歯磨きを容易にしますのでやはり効果的な予防法の選択肢ということができるでしょう。
噛み合わせの改善
「噛み合わせは治療しなければいけませんか?」
これはよく聞かれる質問のひとつです。ある種の噛み合わせは明らかに食物を噛み切り、砕く働きが劣ることになります。例えば開咬という前歯が咬み合わない症状の患者さんは、治療を終えたあと「お蕎麦が前歯で噛み切れるようになった」とおっしゃいます。
また噛み合わせが悪いと全身状態に悪い影響が出るということを心配している患者さんもおられます。診療にあたっていると、治療の改善とともにそういう不定愁訴(頭痛、いらいら、疲労感、不眠など漠然とした不快感を伴う自覚症状を訴えるが,それとからだの異常との関連がはっきりしないもの。)が改善する患者さんがいらっしゃることも経験します。
しかし、私はこういう症状だけが気になるという患者さんには矯正治療を強くすすめることはしません。なぜかというと、噛み合わせと不定愁訴の関連はまだ明らかにはなっていないのです。
実際には噛み合わせの治療で、腰が伸びず歩けなかったおばあさんが歩けるようになったという症例も体験していますが、それでも医学的な証拠がない以上患者さんには無責任に保険外の高価な治療はすすめられないなというのが、今の私の考えです。
噛み合わせを治療する明らかなメリットも存在します。まず上下の歯があたる部分が明らかに増えることで、食べ物はより効率的に粉砕され、食物を摂取する上での第一の行為である「咀嚼」の効率はグンと高まります。
我々は専門用語でいう、Class I とか I級というかみ合わせを目指します。このかみ合わせは上下の歯が櫛の歯のように互い違いにぶつかりあり、上下の歯がくっつくたびにお互いの歯を均一に押し付け合います。
矯正治療には、後戻りといって綺麗に並べた歯が治療の後、元の場所に戻っていってしまう現象がおきてしまうことがありますが、しっかりと噛み合った状態ではこういう後戻りは起きにくく、いわば噛む力が歯の位置を安定させることとなります。
ですから噛み合わせを良くすることは、治療の目標でもあり、かつ治療の経過を良くする役割も果たしているといえます。
近年、オーラルフレイルという概念が提唱されてきています。これはいわゆる寝たきりなどの全身状態の衰弱の前には、必ず舌の動きや咀嚼能力が低下しているということが東京大学の研究で確認されました。したがって矯正治療で歯並びをよくして、歯周病や虫歯の予防につなげ歯を維持することや、咬合をよくして咀嚼効率を高めるということは、オーラルフレイルを防ぎ、全身の衰弱を防ぐことにつながっているとも言えます。矯正を行う方はどちらかというと若い方が多いのですが、高齢の方で入れ歯を入れるのに苦労しているかたなどは噛み合わせの問題があることも少なくなく、歯を失う前に矯正治療をやっておけばよかったのになあと感じることも少なくありません。
横顔の改善
この写真をみていただくと、随分と横顔が綺麗になっているのがわかると思います。矯正治療を行なうにあたり、口元の状態を評価し、これを改善するための治療計画を立て、これを患者さん協力の元で実践できれば、このような結果をだすことができます。
口元は鼻の尖端、唇、下顎のオトガイの位置で決まりますが、鼻の位置は歯科矯正治療では変りませんので、唇の位置に影響を与える歯の位置とオトガイの位置をどうするかを治療計画に組入れて、どのように力をかけていくかという知識と技術が矯正医には求められます。オトガイの位置を変化させるのは簡単ではなく、成長の止まった成人では難しい場合も少なくありませんが下顎前歯を動かすことによって、下唇からオトガイにかけての形態を改善することができ、より良い口元への変化を期待できます。
もちろん、この変化は全ての患者さんで同じように起きるわけではなく、個人差がもちろんあります。歯がどれだけ動くかもありますが、歯の変化によって唇などの軟組織がどのように変わるかが一様であるとはいうことは出来ません。
また歯の動き自体も患者さんがどのような矯正装置を選択するかということも影響があります。しかし、まずは矯正を行なう歯科医師が、横顔、口元を改善するということをしっかりと治療目標にしているか、また、それを実現するだけの知識と技術を有しているかが大切です。
院長
高橋 滋樹世界でもっとも伝統があるTweed philosophy(ツイード・フィロソ フィー)に基づく治療を実践。2015年には、アメリカのTweed philosophyスタディコースでインストラクターを取得し、ツイードテ クニックをマスターしています。