第4話:矯正治療で大切なQ&A
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第4話:矯正治療で大切なQ&A
誰しもが思う疑問
当院は秦野市という神奈川県の西のハズレの人口17万程度の市にあります。東京は少し遠いですが、東名高速のICもあり小田急線で新宿まで一本、おまけにロマンスカーも停まります。丹沢の山並み、富士山もくっきりと綺麗に見えます。夏の夜には晴れていれば富士登山をする人の明かりが行列になってみることもできます。
そういう地方都市でも年間120名~200名くらいは初診患者さんとして相談にやってこられます。全員の患者さんが治療をうちでは始めるわけではありません。当院で治療を開始しなかった患者さんのその後は調べることはできませんが、矯正をやらなかった方もいるでしょうし、他院で矯正治療を始めた方もいると思います。矯正治療はやらないと死んでしまう治療ではありません。
「うちの子は(もしくは私は)矯正治療をやらないとダメですか?」と聞かれることがあります。
私は「やらないとダメということはありません。やらないと大変なことがおきると脅すようなことも言いません」と答えます。ただ、より環境を良くするためであればやる価値はあるなあという方が相談に来られる方がほとんどです。
少々乱暴なたとえですがこういうお話をさせていただくこともありま す。
外出するときものを持ち運ぶのに、コンビニのビニール袋でも用はたりる場合があります。でもそこにお金を出してかばんを買って、外見や機能性耐久性を得るわけです。矯正治療もそのようなことが多いです。かばんの値段とそれに応じた価値観はひとそれぞれです。
でも見た目が気になって、耐久性が気になるならば僕はお金を払っても良いのではないかなと思います。概ね100万円矯正治療にかかるとしても、物を購入すればその瞬間から価値は下がり始めますが、矯正治療の場合は治療が終わった時の状態は、ちゃんと治療ができていれば治療前よりもしっかりと良くなっているはずです。
主にご質問いただく3つのこと
初診相談は30分から1時間行わせて頂いていますが、その他よく聞かれる質問としては
1 歯は抜かなければだめでしょうか?
2 装置はどの装置が良いのか
3 いつ始めるのが良いのか
の3つです。これらについて以降ふれていきたいと思います。
歯は抜かなければだめでしょうか?
私達は歯科医師ですので、歯はできれば抜きたくないと思っています。そして矯正治療の相談にみえた患者さん、そのお父さんお母さんも歯は抜きませんといえば大半の方は喜ぶだろうということも良く理解しています。
それでも抜歯を伴う矯正治療を提案するとき、我々は抜歯をして矯正治療をしたほうが、治療結果が良いものになるだろうと考えて提案しています。抜歯が嫌な患者さんにとって矯正治療のための抜歯はデメリットです。でもそのデメリットを打ち消してそれ以上の結果がでるだろうという場合に抜歯を伴う矯正治療が提案されているわけです。
また、私は患者さんに次のように説明することがあります。
歯を抜かなければならない症例もあります。また歯を抜いてはいけない症例もあります。そして抜歯非抜歯のボーダーラインとなる症例すなわち、抜いてもできるし、抜かないでもできる症例もあります。
まずは抜くべき症例で抜かない、抜いてはいけないケースで抜くという間違いはおかしてはなりません。抜歯非抜歯のボーダーラインの症例の場合、抜いても抜かなくても同じ治療結果にはならないというのは、我々としては当たり前のことですが、治療の結果はおなじになると考えておられる患者さんが意外といらっしゃいます。
同じ治療結果になるなら歯は抜かないのが当然ではないでしょうか。治療結果が異なるわけですから、抜歯するかしないかのボーダーラインにある症例の場合、どのように治療結果が抜歯非抜歯で変わるのかというところを、しっかりと矯正を担当する先生に確認することが重要です。
繰り返しになりますが、抜歯しないというのは患者さんにとって非常にわかりやすいメリットですが、そのメリットをとった結果もっと大きなメリットを取れない場合や、デメリットをとってしまうことがあるということをしっかりわかっていただきたいと思います。
抜くべきか、抜かないべきか
では、ボーダラインケースで抜歯治療と非抜歯治療、具体的にはどのように治療結果が変わってくるのでしょうか。
大きく分けると2点違いがあると私は考えています。ひとつは前章での目的としてあげた横顔の問題です。例えば、歯並びを治し咬み合わせを治すだけなら非抜歯でも治療が可能ですが、突き出た口元を治したいという場合は抜歯が必要になるということはよくあることです。この場合、口元を治したいかどうかが抜歯選択の基準となります。
すなわち
口元を改善したいので抜歯をする。
口元は変わらなくてよいので抜歯をしない。
口元が悪くなっても抜歯をしない。
今すでに良好な口元なのでこれをキープするために抜歯をする。
この4パターンになると思います。抜歯非抜歯のボーダーラインケースであればこの4パターンから患者さんに選んでいただくということになりますが、個人的には口元が綺麗な人は悪くしないほうがよいと思うし、悪い人は綺麗にできればと思います。
もうひとつは、安定性の問題です。ボーダーラインケースで非抜歯治療を行なう場合歯を抜かずに歯を並べる場所を確保する必要がありますので、前歯を唇の方に倒していく場合があります。この場合は横顔でいうと改善は絶対に期待できません。
しかし横顔が良くできないというデメリットだけではなく、歯並びがまた元に戻っていく安定性にも影響があります。
たった1mmで変わる“治療後”
2014年冬に公益社団法人日本臨床矯正歯科医会の症例発表ケース約300弱の分析を行なう機会に恵まれました。この際前歯が1mm以上唇の方に倒して治療している非抜歯の治療では、後戻りが出やすいということを示唆する結果が出ました。
たった1mmでもこういう結果が出てしまうわけです。これも先生によっていろいろなお考えもあるとは思いますが、私自身は特に下の前歯を前方(唇の方)に倒して治療するのは原則的には避けたいと思っています。
これは横顔がよくならない(もしくは悪くなる)ことと術後の安定性のふたつの理由です。また前歯より後ろの方の歯をむやみに広げる治療が良い結果とならないことは、先にも触れたとおりです。
院長
高橋 滋樹世界でもっとも伝統があるTweed philosophy(ツイード・フィロソ フィー)に基づく治療を実践。2015年には、アメリカのTweed philosophyスタディコースでインストラクターを取得し、ツイードテ クニックをマスターしています。